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東京家庭裁判所 昭和27年(少)2446号 決定 1952年2月09日

本籍 愛媛県○○市○○町○○番地

住居 東京都○○区○○町○○番地

職業 無職

真木某

昭和七年○月○日生

右少年に対する横領、詐欺、銃砲刀劍類等所持取締令違反保護事件について当裁判所は審理を遂げ次の通り決定する。

主文

少年を特別少年院に送致する。

理由

少年は某大学政経科を卒業し新聞記者、東京都主事などをなしていたことのある実父某当五一才と実母某との間に東京に生れた。一才のとき実母は離婚され、その後少年は実父の後妻の手によつて育てられ昭和十三年四月○○第○小学校に入学、同十九年三月同小学校を卒業し、同年四月○○大学第○中学校に入学、更に同二十三年四月同大学予科に進学したが翌二十四年同大学予科を中退し会社員、進駐軍の放出衣料の販売などをなしていたが、同二十四年十一月以降現在に至るまでの間に傷害、窃盜等の保護事件を惹起して当庁に送致せられ現在保護観察処分継続中のものであるが悪友と交わりいかがわしい場所に出入しヒロポン代に窮して少年は

(一)  昭和二十六年十月十三日知人の○塚から茶色婦人冬オーバー等二点の入質方も依頼されこれを東京都○○区○○町○○番地質商○島方に入質して得たる一、八〇〇円を預り保管中その内一、五〇〇円を前記○塚に手交し残り三〇〇円をその頃ほしいままに都内において費消横領し

(二)  同年同月十五日前記品物を前記○島方より受出し保管中その頃ほしいままにこれを同都同区高円寺七丁目九一六番地古物商○林方に二、五〇〇円にて売却し差引七〇〇円を費消横領し

(三)  同年同月三日前記○林方において同人に対し返済の意思なきに拘らずこれあるごとく装い同人に対し「すぐ二、三〇分位で返すから貸して貰い度い」と申向けその旨同人を誤信せしめて即日同所において同人より一五〇円を交付せしめてこれを騙取し

(四)  同年同月十三日同都同区○○町○○番地○久方において同人に対し前記同様の手段を用い即日同所において同人より現金二〇〇円を交付せしめてこれを騙取し

(五)  何等法定の除外事由なくして同年八月頃同都同区○○町○○番地○塚方において同人より小型拳銃一挺の売渡し方の依頼を受けこれを受領所持した上前記同日時頃国電○○駅前○島某に三、〇〇〇円にて譲渡したものである。

以上の事実は

(一)  少年の審判期日における供述

(二)  少年の少年調査官に対する供述調書

(三)  少年の東京地方検察庁検察官に対する供述調書

(四)  少年の司法警察員に対する供述調書

(五)  被害届

によつてこれをみとめることができる。

前記少年の所為は刑法第二五二条、同第二四六条、銃砲刀劒類等所持取締令、第一四条、同第二七条に該当するものであるが、当裁判所としては身柄を保護者に引渡し一定条件のもとに試験観察継続中のところその後の経過も思わしくないので少年調査官作成の少年調査票、同報告書、東京少年保護鑑別所の鑑別結果通知書を併せ考えるに少年の健全なる育成を期するためには少年の性行とその環境との情況とに鑑み、少年院における矯正教育に託するを相当と思料するただ閲歴事業並びに年令等に徴し少年の非行性も高度に進んでいると考えられるので、特別少年院に送致することとし少年法第二四条第一項第三号、少年院法第二条によつて主文の通り決定する。

(裁判官)

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